「今治造船の場外社員食堂」
今治市の波止浜(はしはま)は愛媛を代表する今治造船のお膝元である。その今治造船の隣の食堂である。よって昔から造船所の若い衆の昼飯場としての役割を担ってきた食堂である。
もともとほとんど一見客を相手にしていないので、昼前後さえ営業していれば暖簾がかかろうがかかりまいが重要なことではないらしい。開店しているのかどうかはまったく不明の引き戸を開けると一応は食堂であるが、店内にメニューらしきものは一切ない。なにせ毎日の造船所の常連客ばかりなので、おおよその値段もメニューもお客さんの頭の方に入っているのであろう。ここは大衆食堂というよりもおおかた今治造船の社員食堂であったのだろう。とすると、さしずめ私は間違えて入り込んできた迷い猫というわけである(笑)。
昼食時間は過ぎていたので店内では元社員さんらしい年配の親父さんが一人で酒を喰らっていた。私の食事の間、店のおばさんも一緒になって世間話の相手をしてくれた。それによると昔はこのような食堂が、工員さんの午後から仕事のためのエネルギー補給所としてフル回転していたそうだ。ところが最近の若いものときたら(笑)、すっかり食が細くなってしまって注文するものを見ると、それで夜まで大丈夫なのかとこちらが心配してしまうことしきりなのだそうである。昔の食堂は独身のなじみ客さん一人ひとりの栄養の状況まで気を回して商売をしていたのである。今ではすっかり少なくなってしまったものの、日本の高度成長期には日本中いたるところにあったこのような食堂の存在が働く若者の下支えをしていたことは間違いの無いことのようである。
ジャンクフードや毎日同じようなコンビニ弁当で食生活を送っている現代の若者は、昭和世代の我々から見て少し気の毒な気持ちがする。
|
「波止浜(はしはま)は今治造船のお膝元である。」
波止浜(はしはま)は今治造船のお膝元である。
「営業しているのかどうか入るのに勇気のいる食堂である。」
営業しているのかどうか入るのに勇気のいる食堂である。
「ショーケースには一品物のおかず」
ショーケースには一品物のおかず
「店内のどこを見てもメニューらしきものがない」
店内のどこを見てもメニューらしきものがない
「どのくらい煮込まれたかわからないカレー。具も原型を留めていないが昔のなつかしい味である。」
どのくらい煮込まれたかわからないカレー。具も原型を留めていないが昔のなつかしい味である。
|